📈 令和6年度 法人税申告の動向 ― 過去最高益とデジタル化の加速
はじめに
国税庁が公表した「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、企業の申告所得・税額ともに過去最高を更新しました。
一方で、源泉所得税は減少し、電子申告(e-Tax)の利用は過去最高を記録しています。
今回は、そのポイントをわかりやすくまとめました。
1.法人税の申告は5年連続の増加
令和6年度の法人税申告件数は約322万件、申告所得金額は約102兆円、申告税額は約18.7兆円となり、いずれも前年を上回りました。
特に申告所得金額と税額はともに過去最高です。
黒字申告の割合は**36.5%(前年比+0.5ポイント)**で、企業収益の回復基調が続いています。
景気の持ち直しやコロナ禍後の需要回復が、企業業績に反映された結果といえます。
2.グループ通算制度の定着
令和4年度から導入された「グループ通算制度」では、グループ全体での損益通算が可能となりました。
令和6年度には通算法人が約1.9万社に増加し、黒字申告割合も56%に上昇。
大企業を中心に、税務の効率化・グループ内の一体運営が進んでいます。
3.源泉所得税は1兆円減少
一方で、源泉所得税等の税額は**20兆3,445億円(前年より約9,900億円減)**と減少しました。
給与所得の源泉税は4.9%減、配当所得は27.9%減と大きく落ち込みました。
株式市場の動きや配当の変化が影響したとみられます。
4.電子申告(e-Tax)は9割近くに
法人税の電子申告(e-Tax)利用率は89.1%と、ついに9割に迫りました。
さらに、財務諸表や勘定科目内訳明細書などを含めて完全電子化した「ALL e-Tax」も67.7%に達しています。
すでに4社に3社が完全電子申告を行っており、税務のデジタル化が確実に進展しています。
5.キャッシュレス納付の普及へ
国税庁は、令和8年度末までに**キャッシュレス納付率54%**を目標に掲げています。
とくに源泉所得税の分野では「体験コーナー」を開設し、e-Taxを使ったキャッシュレス納付を推進しています。
中小企業や個人事業者にも、オンライン納付の導入が今後ますます求められます。
まとめ
令和6年度の法人税申告の動きは、
- 企業業績の堅調な回復
- 税務手続のデジタル化の進展
という2つの流れが鮮明になった一年でした。
国税庁が掲げる「税務署に行かずに完結できる社会」は、着実に現実のものとなりつつあります。
税務・会計の現場でも、デジタル化を前提とした体制整備が欠かせません。

