代表権と期限で決まる事業承継税制の適用要件

事業承継税制の適用には、代表権の有無と申請期限の厳守が重要で、特例承継計画の提出期限は令和8年3月末まで延長されています。

【1】代表権に関する要件と複数代表取締役の取扱い

  • 贈与者は贈与時に代表権を喪失している必要があり、受贈者は同時点で代表権を保有していることが求められます(措法70の7、措令40の8)。
  • 代表取締役が複数いる会社においても、登記上「代表取締役」とされていれば、肩書(社長・副社長等)にかかわらず要件を満たします。
  • ただし、定款で代表権の行使に制限(共同代表制など)を設けていると、単独の代表権がないと判断され、制度の適用が否認される可能性があります。

【2】申請期限と改正の動向

  • 適用には「特例承継計画」および「認定申請書」の提出が必須。
  • 特例承継計画の提出期限は、2024年度税制改正により、従来の令和6年3月31日から令和8年3月31日までに2年間延長されました。
  • 一方で、実際の贈与・相続が行われる期限(特例措置の適用期限)は引き続き令和9年12月31日までであり、延長されていません。
  • 認定申請書の提出期限は、贈与型で贈与日から3か月以内、相続型で**相続開始後10か月以内(=相続税申告期限まで)です。

■ 実務上の留意点

  • 代表権の有無の確認は登記簿謄本ベースで行い、肩書に惑わされないこと。
  • 特例承継計画の提出は、認定経営革新等支援機関(税理士・商工団体等)と連携して作成する必要があるため、早期の着手が肝要。
  • 申請期限を過ぎた場合、いかなる理由があっても特例措置の適用は不可。

事業承継税制は、非上場株式の贈与・相続に伴う相続税・贈与税の納税猶予を通じて、中小企業の円滑な経営承継を支援する制度です。適用を受けるためには厳格な形式要件が設けられており、特に「代表権の有無」および「申請期限の遵守」が重要です。