店舗併用住宅における住宅ローン控除の按分と注意点
店舗併用住宅では、住居部分に対応する借入金のみが住宅ローン控除の対象です。
🏠事例の概要(前提条件)
区分 | 内容 |
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土地面積 | 300㎡(うち120㎡は貸駐車場) |
土地購入価格 | 6,000万円(借入金4,000万円) |
建物延床面積 | 180㎡(1階:店舗90㎡、2階:住居90㎡) |
建物建築費用 | 3,000万円(借入金2,000万円) |
借入金の内容 | 土地・建物それぞれ別に借入(年末残高:合計6,000万円) |
✅ 住宅ローン控除の基本要件(※主なもの)
以下は住宅借入金等特別控除の主な要件です(個人が適用を受けるための条件):
区分 | 要件 |
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住宅の用途 | 自分で居住する住宅であること(※店舗部分などは対象外) |
床面積 | 50㎡以上(令和4年以降一部条件で40㎡以上) |
居住割合 | 床面積の1/2以上を自己の居住に使用すること |
借入金の条件 | 返済期間10年以上の住宅ローンであること |
入居期限 | 控除を受ける年の12月31日までに実際に入居していること |
※上記は租税特別措置法第41条及びその通達等に基づきます。
📘この事例に当てはめると…
- 総床面積:180㎡(うち90㎡が住居)→ ちょうど1/2が住居
✅ → 面積要件クリア - 住居は本人が使用(想定)
✅ → 用途要件クリア - 借入金は土地と建物で別々にあり、年末残高あり
✅ → 借入金要件クリア(返済期間10年以上が前提)
📊控除対象借入金の計算
🔸(1) 建物に係る借入金の按分
項目 | 内容 |
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借入金残高 | 2,000万円 |
居住部分の割合 | 90㎡(住居) ÷ 180㎡(全体) = 1/2 |
式 | 2,000万円 × 1/2 = 1,000万円 |
✅ 建物について控除対象となる借入金:1,000万円
🔸(2) 土地に係る借入金の按分(2段階)
⬛ステップ①:「貸駐車場部分」を除く
項目 | 内容 |
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借入金残高 | 4,000万円 |
居住用に供される土地 | 180㎡(300㎡ – 120㎡) |
式 | 4,000万円 × 180㎡ ÷ 300㎡ = 2,400万円(按分後の対象借入金) |
⬛ステップ②:「建物の住居部分割合」で再按分
| 式 | 2,400万円 × 90㎡ ÷ 180㎡ = 1,200万円 |
✅ 土地について控除対象となる借入金:1,200万円
🧮合計:控除対象となる住宅借入金等の金額
建物:1,000万円 + 土地:1,200万円 = 合計:2,200万円
🖼️図解イメージ
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│ 店舗併用住宅(180㎡) │ ← 建物の延床面積(1階:店舗/2階:住居)
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│ 1階(店舗:90㎡) │ ← 控除対象外
│ 2階(住居:90㎡) │ ← 控除対象
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│ 土地(300㎡) ※うち120㎡は貸駐車場(対象外) │
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✏️まとめ(計算結果)
区分 | 控除対象金額 |
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建物(住居部分) | 1,000万円 |
土地(居住対応部分) | 1,200万円 |
合計 | 2,200万円 |
住居部分に対応する借入金のみが住宅ローン控除の対象となり、この事例では合計2,200万円が控除対象です。
この事例は、住宅ローン控除の「住居部分に限定される」という原則がよく表れています。
特に店舗併用住宅や貸駐車場などがある場合は、用途に応じて厳密に按分されるため、事前の資金計画と使途区分の明確化が極めて重要です。
土地の一部や1階の店舗部分が控除対象外になる点は見落とされがちなので、設計段階や融資時点から税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。